記事制作者：Nazuna.N
SNS広告は、文章や画像、動画などのクリエイティブを素早く作成し、テストを重ねながら効果を上げることが重要になりました。
この効率化を支えているのが「生成AI」です。文章やビジュアルを自動生成し、多様なパターンのクリエイティブを短時間で産み出せることから、既に広告現場の技術革命として受け止められつつあります。
しかし、AIは便利な上、何でも任せていいわけではありません。ブランドの雵らしさや社会的文脈、トレンドを見極める力、また、結果を分析し、次の拡張につなげる戦略は人間の仕事です。
このコラムでは、生成AIと人間の役割を明確にし、SNS広告運用の現場で実際にどのように分担していけばいいかを解説していきます。
1.AIに任せるべきこと
1-1. クリエイティブ制作の高速化と量産
デジタル広告全体のインプレッション数は年々増加しており、ある調査では一人のSNSユーザーが1日に接触する広告数は100本以上とされています。
アルゴリズムによる最適配信が進む一方で、ユーザーは広告疲れが発生し、潜在的な嫌悪感を抱きやすくなっています。
1-2. クリエイティブ制作の高速化と量産
広告文も、1種類では通用しません。Z世代と30代女性では響く言葉がまったく異なるため、パターンごとの使い分けが必要です。
生成AIを活用することで、ターゲット属性に合わせた言い回し・トーンの調整を自動化でき、スピード感のあるコピー開発が実現します。
1-3. 媒体ごとのフォーマット対応
Instagramのストーリー、TikTokの縦動画、Facebookフィードなど、媒体ごとに最適な比率・秒数・構成が異なります。
AIは、1つの素材から各プラットフォーム向けに自動リサイズやレイアウト調整を行えるため、面倒なフォーマット対応の工数を大幅に削減できます。
2. 人間が担うべきこと
2-1. ブランドトーンの設計と最終チェック
AIはブランドらしさを自動で理解しにくい
自社の世界観やトーン＆マナーに一貫性を持たせるためには、生成AIが出したクリエイティブに対し、人間による最終チェックと修正が不可欠です。
船井総研によれば、AIで生成した広告案に必要なのは「人間のディレクションに応じた柔軟な表現」だとされています。
2-2. 文脈・リスクへの配慮
社会的背景やトレンドを踏まえる判断
生成AIは過去のデータに基づいて表現を行いますが、現在の社会情勢やセンシティブな文脈には対応できません。
暴力、人種、災害などに関するリスクは人間目線で判断し、事前に調整が必要です。
ハルシネーション防止と信頼性担保
AIが「事実とは異なる内容」を生成するハルシネーションにより、誤った情報が流れるリスクがあります。
景品表示法や名誉毀損に抵触しないためにも、生成後に正確性のチェックを行う体制が必要です。
2-3. ストーリーと構成の設計
連続体験としての広告設計
SNS広告は「単発投稿」ではなく、ユーザー体験を設計することが需要です。AIはアイデア出しや素材生成には向きますが、流れや展開を設計する「構成力」は人間の仕事です。
また、MarkeZineによれば、生成AIを企画設計の起点に使うにはターゲットとコンテンツ案をセットで考えるという人の判断が不可欠とされます。
2-4. データの深い解釈と改善戦略
AIは報告まで、人間は補完と次を導く
SNS広告のAIではレポート生成や改善案の提示が可能ですが、背後の「なぜそうなったか」という分析や改善には人間の洞察が欠かせません。
AI-Front-Trendでは「AIに任せる部分と人間が介入する部分を明確に区別する」ハイブリッド型が効果的とされています。
3. 2025年現段階でのAIとの実務的な付き合い方
3-1. なぜ”完全自動”ではなく”ハイブリット”なのか
生成AIは確かに強力なツールですが、現場で完全自動化が成立しにくい理由があります。AI活用の最前線にいる企業（Adobe,Omnekyなど）でも、「AIが作る→人が見る→再度調整する」という人の目を通すループが欠かせないとされています。
・AIの強み：大量生成、高速処理、簡易な最適化
・人の強み：判断力、文脈理解、ブランド保護、戦略設計
この2つを組み合わせる「ハイブリッド運用」が、実務上もっとも効率的かつ安全です。
3-2. 分担モデル①：制作フェーズ
アイデア出し：AI＋人
コピー・画像生成：AI
トンマナ調整・修正：人
採用案の決定：人
3-3. 分担モデル①：制作フェーズ
配信設計：AI＋媒体ツール
効果測定：AI
解釈・改善案立案：人
4. 実際の企業活用事例
4‑1. Omneky：多チャネル&ブランド一貫運用で3.5~200%の効果
Omiana（自然派コスメ）
OmnekyのAIが広告素材を自動生成し、複数チャネルでA/Bテスト。
3.5×ROI・前年比売上+200%、広告運用費用も大幅効率化
Rad Intel（クラウドファンディング）
AIとデータドリブン戦略で広告を最適化。リード単価80%削減・2,000万以上インプレッションを達成
ポイント：
AIによる大量生成＋人によるブランド監修が、短期で高ROIを叩き出す鍵となっています。
4-2. Smartly.io：運用自動化&クリエイティブ最適化
inDrive（グローバル配車サービス）
6,700以上のクリエイティブ素材を管理。広告出稿作業の85%自動化、CPA7.8%減
AIによる予測予算配分（1日160回以上）で最適ROIを維持。
Foot Locker（スポーツ用品）
10,000以上の商品画像を自動生成し、CTR＋32%、CPA-28%を達成。
Jumeirah Hotels（高級ホテル）
AI配信の予測バジェット最適化でROAS＋109%、CPC-59%、工数372時間削減。
ポイント：
大量クリエイティブ作成とAI運用最適化がセットになり、人的負荷削減と数値改善を同時に実現しています。
5. 今すぐ使えるプロンプト例とコピー生成手法
AIが広告制作に活用される中で、現場では「ただ生成する」だけでなく、「戦略を含めた出力」を得るための高品質なプロンプト設計が重視されています。とくにトップコピーライターや広告戦略の専門家が使うフレームワークを再現することで、ターゲットに刺さる広告コピーを効率よく開発することが可能になります。
以下は、実際のAI活用現場で用いられているプロンプト設計例です。
5‑1.プロンプト例：AI×コピーライティング支援
あなたは広告戦略の専門家であり、トップコピーライターです。
# ── 入力変数 ──
■ SERVICE_NAME：{{サービス名}}
■ CONCEPT：{{サービスの特徴・価値}}
■ TONE：{{トーン}}（例：信頼感重視／ポジティブ／スタイリッシュなど）
■ COPY_VARIANTS：{{作成するコピー数}}
# ── 出力手順 ──
【Step1】 訴求の設計（What to say）
1. 想定ペルソナ（年齢・性別・ライフスタイル・主な悩み）
2. インサイト（本人も気づいていない根本的欲求）
3. ベネフィット（このサービスで得られる本質的価値）
4. 上記を統合し、“Who／What／Why”を一文で表す訴求文を作成
【Step2】 コピーの展開（How to say it）
短く刺さるキャッチコピーを指定数だけ生成
各案に以下を含める：
① キャッチコピー（〜12文字）
② 補足説明文（20〜40文字）
③ CTA（行動喚起）
④ コピータイプ（ベネフィット型／共感型／逆説型など）
【出力サンプル】（例：副業スクール）
・SERVICE_NAME：ライフシフト副業アカデミー
・CONCEPT：SNSを活用して月10万円を得るスキルを身につける副業スクール
・TONE：希望に満ちたポジティブ
・COPY_VARIANTS：3
【Step1：訴求設計】
・ペルソナ：25～40歳の会社員女性、SNSは日常的に使うが“見るだけ”になっている
・インサイト：「SNSを見る時間が収入源になるなんて考えたことがない」
・ベネフィット：・SNSを“副業ツール”に変えることで月10万円の収入が得られる/未経験でも仲間と進められる安心感/将来への自信と選択肢が増える
・訴求文（Who／What／Why）：
「将来に不安を抱えるSNSユーザーに、いつものSNSを収入源に変えるスキルを提供し、“安心できる自分”への一歩をサポートする。」
【Step2：コピー案】
このように、「誰に何を伝え、なぜそれが必要か」を明確にしたうえで、AIに指示を与えることで、表現ブレのない・再現性の高い広告コピーを自動生成することが可能になります。SNS広告の現場では、このテンプレートを用いたプロンプトが「チームの共通言語」として活用されており、属人化せずに質の高いアウトプットを量産できる点が高く評価されています。
6. まとめ
本コラムでは、生成AIの活用によってSNS広告の運用がどのように変わるのかを、役割分担という観点から整理してきました。
生成AIは、効率化だけでなく「クリエイティブ戦略の質的転換」を促す存在になりつつあります。
AIの台頭により、マーケターの役割も変化しています。
今後は以下のような力が重要になるでしょう。
・AIを使いこなす力
・ブランドと世の中を結びつける文脈設計力
・数字だけでなく意味を読みとく分析力
AIは確かに強力ですが、戦略・判断・共感はまだ人間にしかできません。
「何を任せ、何を考えるべきか」を明確にして、AIと人間がそれぞれの強みを発揮するチーム体制を作っていくことが、これからの成功の鍵となるでしょう。
・生成AIを活用した広告運用を始めたいが、何から取り組めばいいかわからない
・自社のSNS広告にAIを導入して、制作コストや効果を改善したい
・AIを活かしつつ、自社らしいブランドを保ちたい
そんな課題やお悩みがあれば、ぜひ私たちにご相談ください。
御社のフェーズや課題感に合わせて、最適なAI活用の導入・運用体制をご提案いたします。
【参考サイト】
・https://www.omneky.com/case-studies/omiana